ビタミンDはがんだけでなく、ウイルスに対抗するにも、外せない栄養素です。

ですが日本では、国民総ビタミンD欠乏なんて言われていまして、足りている人はほぼいないような状況です。

なぜなら、身体のビタミンDは、その8割が日光に当たることで皮膚で作ることができるビタミンだからです。

しかし、太陽に当たると皮膚がんになるというイメージが定着して、日光浴なんてあまりしなくなりましたし、「美白ブーム」により極力太陽に当たるまいとする傾向がさらに強くなっていますよね。そりゃ欠乏します。

ビタミンDを合成するのに必要な紫外線[UV-B]は窓ガラスでもシャットアウトされますので、一日中室内働いている時点でアウト!

食品でいうとお魚の油から取りやすいのですが、あまりお魚食べない人が増えていますしね。

そんなこんなで日焼け止めも塗らずに外で仕事をするような方や、サーファー意外は、大抵がビタミンD不足になってしまうのです。

まめちしき

ビタミンDは脂溶性です。ですから胆汁が十分出ていない人は吸収が悪いということになります。それにビタミンDの吸収や活性は小腸・肝臓・腎臓で行うので、腸管がボロボロで下痢気味だったり、肝臓・腎臓の機能が落ちていてもNG。ということになります。
ビタミンDを吸収できる体にしておくには、

・腸のケア、胆汁が出ているかチェック

・お酒やストレスで肝臓・腎臓を痛めないようにする

といったことが必要になります。

ビタミンDの様々な作用

ビタミンDは以前は骨を強化するビタミンというくらいの認識しかなかったのですが、近年その作用の多さが大変注目を浴びており、論文も数多く発表されています。


・骨からカルシウムの吸収を高め骨や歯の発育を助ける

・血中カルシウム濃度を一定に調節し神経伝達や筋肉の収縮などを正常に行う

・抗腫瘍作用、抗がん作用

・免疫を高め、免疫のコントロールを行う

・感染症を予防する

・血糖値を正常にコントロールする

・血圧の調整

・自己免疫疾患を予防する

・うつ病を予防する

ビタミンDは細胞内のに働きかけるので、ホルモンと同じような作用をしています。
細胞核に働きかけるだけに、その作用はパワフルです。
逆に不足することの影響も大きくなってしまいます。
甲状腺、子宮、脳、腸、といった臓器だけでなく、身体中ほぼ全ての組織や細胞にビタミンDの受容体が存在することがわかってきました。なんと200以上の遺伝子と総合作用しているんだとか。
よくわからんが、とにかく様々な働きをするビタミンD!!
この後は、がんと感染症に的を絞ってまとめたいと思います。

ビタミンDとがんの論文

ビタミンDとがんの関係は1980年代からコホート研究がなされてきました。ビタミンDとがんに関してはとにかく多くの論文があります。「大腸がん」と「乳がん」に関しては特に関与が強いようです。いずれも、日本人に多いがんですね。

血中のビタミンD濃度(25OHD)が20ng/ml増加するごとにがん発症率が減少し、がん死亡率も減少することが報告されています。

ただ、薬理的な効果を発揮させようと思えばかなり沢山の量が必要だということもわかっています。

以下の論文では、直腸がんの発生率を下げるには少なくとも1日1000〜2000IU(25μg〜50μg)のビタミンDの摂取が必要としています。

⭐️直腸がん予防のための最適なビタミンD量

乳がんとビタミンDの研究は非常に多くあります。

以下は米国の研究ですが、経度が高く日光にあまり当たらない地域と、日光によく当たる地域で比べたとき、日光に当たらない地域の女性は優位に乳がんの罹患率が高いことがわかりました。

ビタミンD摂取が多いと閉経前の女性では乳がんリスクが大きく減ったという報告もあります。

また、乳がんの初期段階の患者さんに対するメタ解析でも、ビタミンD濃度が低いことと再発や死亡リスクの増加に関連があることがわかっています。

⭐️ビタミンDの血中濃度と初期乳がんの予後

なぜこれほどビタミンD濃度と発がんの関わりが深いのかと思いますよね。
それは、ビタミンDが核に直接働きかける栄養素であり、不足すると遺伝子異常が起きてしまうからなんでしょうね。(これはビタミンAも同じです。)
またビタミンDには、免疫力を上げることに加え、腫瘍細胞のアポトーシス(自殺死)を誘導したり、がん細胞の浸潤を阻害する作用があるんです。
そのため、がん予防にも再発予防にもビタミンDは欠かせないものになっています。

ビタミンDと感染症

もうご存知の方も多いとは思いますが、感染症とビタミンDの関わりについても書いておきます。

スペインに続いて、フランスのアンジェ大学病院でも、COVID-19に対する高濃度ビタミンDの投与試験が始まりました。(2020.4.14発表)

ビタミンDだけで治せるわけではありませんが、その有効性を試験しようとしてくれているのは素晴らしいことです。

対象は70歳以上の高齢者260人、ランダム比較として1ヶ月間 40万IUのグループと5万IUのグループを設け血液検査や経過をみるそうです。

40万IUとは!!ちょっと驚きましたが、重症な方に使うので、至適量である必要がありここまで思い切った量にしたのでしょうね。結果が楽しみです。

ビタミンDを5000IU〜高容量使う時は・・・
高カルシウム血症を避けるためにマグネシウムもしっかり補給してください。
腎臓に負担になることもあるので、自己流で摂取せずに医師相談して25OHDのモニタリングを。

ビタミンDがなぜ感染症に対してそれほどまでに注目されているのでしょうか。

理由はビタミンDが制御性T細胞(Tレグ細胞)を誘導するから。

・・・は???

ですよねww

ちょっと説明すると、

体にウイルスが侵入すると、免疫細胞はそうとう張り切って武器を振り回して敵を攻撃します。(武器=活性酸素発生)

免疫細胞たち、強烈な敵を前にかなりの興奮状態ですから、ちょっとやりすぎちゃうんです。

で、力が入りすぎて、敵だけではなく味方の正常細胞まで傷つけ始めます。(←サイトカインストーム

今回のCOVID-19は、このサイトカインストームの発生が恐ろしいのです。

自己免疫の暴走で、肺だけでなく身体中に飛び火して、肝臓や腎臓や脳などの多臓器不全に陥ってしまうことがあるんです。

だったら、免疫細胞がめちゃくちゃ興奮している状態を誰かが収めてくれればいいですよね。

実は、それをしてくれるのが制御性T細胞(Tレグ細胞)です。「免疫細胞よ、ちょっと落ち着け」と言ってくれるわけです。

ビタミンDはこのTレグ細胞も活性化するんです。

ですから、ビタミンDが欠乏している人はサイトカインストームを起こしやすくなり、重症化しやすくなるいうことになります。

今は、感染しても重症化しないようにということが大切になってきました。

ビタミンDはしっかり持っておきたいですね。

ビタミンD濃度を知ってビタミンDを摂ろう!

ぜひ一度、採血でビタミンD濃度(25OHD)を調べてみることをお勧めします。
(保険適応外。栄養療法を取り入れているクリニックでしたら25OHDの検査を導入していることが多いはずです)
最適値は40~70ng/mlですが、実際には20~30ng/mlくらいの方ばかりです。中には20を切る方も。。。
自分のビタミンD濃度が低いことがわかったら補充しなくちゃいけません。

「ビタミンDと言えば、干し椎茸ですよね」とお思いの方もいらっしゃるかもしれません。

しかし、現在はほぼ乾燥機で乾燥させた干し椎茸ですし、仮にお日様に当てていても、干し椎茸2枚で32IUしか摂取できません。

期待できるとしたらお魚です。

しらす干し10gで244IU

イワシ2尾(約110g)で1408IU

鮭1切れ(約80g)で1000IU

とは言え、毎日お魚ってなかなか難しいですよね。

やはりビタミンDはサプリメントでとった方が無難です。

少なくとも、1日1000〜2000IU(25μg〜50μg)は欲しいところです。
ビタミンDのサプリメントを購入する際は必ず内容量をご確認ください。

ちなみに、ビタミンD3のサプリメントはとっても安価で手に入ります。

特に推奨しているものがあるわけではないですが、

例えば、NOW社のこれなんて472円です。とりあえず使っておいて損はないです。


ということで、がん予防にも感染症の対策としても注目度の高いビタミンDのお話でした。ぜひ取り入れてみてくださいね。

*参考 信長チャンネル:https://www.youtube.com/watch?v=dt-UvnLITTE

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