良かれと思って行った”がんの食事療法”が
鬱(うつ)を招くこともあります。
その例として私の大好きだったUさんの事を書いてみますね。
大好きだったUさんの話
もう、20年近く前の話です。
ゲルソン療法がアメリカで流行っていた頃。
私が親のように慕っていた、大好きなUさんは、40代半ばで乳がんを患いまいました。
Uさんは、少し日本人離れした、目鼻立ちの美しい素敵な女性でした。
とっても穏やかで、賢く、愛情深く、ちょっと怖がりで、チャーミングな性格。
いつも猫を飼っていました。
娘さんたちと幼なじみだったので、夏休みは一週間くらいお泊りしあって、
兄弟のように仲良くさせてもらっていました。
本当にお世話になったとつくづく思います。
そんな彼女がガンの末期だと聞いた時のショックを想像できるでしょうか。
とても信じられませんでしたし、信じたくなかったですね…。
乳がんが見つかった時、すでに標準医療では手の施しようのない状態でした。
医者からは何もできることはないと言われましたが、メキシコで行われている
がんの代替療法に改善例が多く見られると聞き、友人をたどって治療を受けることにされました。
結果的にどうなったか、というと…
「今の医療で、この状態で生きている人を見たことがない」
と日本の医者が驚くほど延命したのです。
何しろ、癌が皮膚を食い破って外に出ていましたからね…;
性格が変わっていく・・
しかし、最後の1~2年間は、人が変ったように少し気難しい感じになってしまいました。
肺に転移して息が苦しそうだったので、誰だってそうなるだろうと思います。
鬱状態になっているのだな…ということも感じられました。
ただ、なぜそうなってしまうのか、その時には栄養の知識もなかったため理解できませんでした。
鬱病という言葉すらまだメジャーではない時代でしたから。
ただ、大好きなママが変っていくのを見なければいけない友人が気の毒でなりませんでした…。
まだ、私たちは二十歳過ぎたくらいでしたから。
食事療法が鬱の原因にもなる
今思うと、Uさんが行なっていた厳格な食事療法が、鬱状態を招いた理由の一つだったかもしれません。
その食事療法は、ゲルソン療法に近いものでした。
基本的に玄米菜食で、肉、卵は一切食べない。
魚もフレッシュなものを少し。(冷凍はダメ)
塩、砂糖も排除。ハチミツは本物を少し。
このお陰で延命できた訳ですが、この厳格な玄米菜食、動物性タンパク排除には、欠点もあります。
彼女の鬱は、がんの進行によるものが大きかったかもしれませんが、動物性タンパクを排除した事も一因と思われます。
コレステロール値が低くなることと、鉄欠乏になること、B群不足になること
どれも鬱を招く栄養の欠乏症です。
がん患者さんはただでさえ、この傾向があるのに、動物性タンパクを意識的に排除することで、さらにバランスを崩します。
脳に栄養が不足すると、人格まで破壊されたようになり、幸福感が失われます。
QOL(高い生活の質)を考えた食事療法でなければ、患者さんやその家族の幸せには結びつかないように感じます。
今だったら、Uさんをもう少し助けられたかもしれないのにと悔やまれます。
ただ、Uさんの闘病生活を見ていたことが、今の私に大きな影響を与えていることは確かです。
がんとの闘いは精神面のカバーも重要
がんと鬱(うつ)が併発する大変さは、経験しないとわからないものです。
ただでさえ、病気に対する不安感による精神的ストレスがある上に、ガン細胞は大きくなると貧血を進行させるので、精神的に辛い状態になります。
異常な不安感、恐れ、やる気の低下、怒り、イライラ…
このような状態は本人も辛いですが、家族も穏やかさを奪われます。
なぜ、そうなってしまうのか、原因がわかれば対応しやすくなるものです。
しかし脳の栄養欠損をカバーする病院は非常に少ないのが現状です。
脳に影響が出ている時は、本人が自分で対応するのが難しくなりますので、ご家族からご相談いただければと思います。
一緒に対処法を探しましょう。